つれづれとミロ受けなお話ポチポチ書いてます。
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ああ、しまったなと自分でもこんな状況に呆れるし困り果てる。
けれど目の前の仕事の山とか、これを終わらせなかったことによるサガからの叱責とかそんなものどうでもいいと思えるほどに心がざわざわと別のことを想い、騒ぐ。
いい大人が情けないだろう?
分かっているさ、けれど止められないのだ。
こんな感情は生まれて初めてだったから。
真夜中の聖域。
会いたい者の居る宮までには四つの宮とそれから長い長い階段がある。
けれど今の自分はそんなもの何の苦にも思えないほど足取り軽く、年甲斐もなく鼻歌だって歌えそうだった。
心が弾む、という感覚を俺は始めて体験した。
ふわふわと足元がおぼつかないくらいに酒に酔ったとき以上の興奮と、鼻の奥がツンと痛み涙が溢れそうになるくらいに胸を締め付ける甘い痛み。
その症状に名前を与えることは簡単だ。
なにせ俺が生まれるずっとずっと前から存在するもので、多くの人間を悩ませてきた永遠に特効薬など開発されない難病なのだから。
「ふふ、落ちるとはよく言ったものだな」
心情的には“持ち上げられる”が正解なのだろうが、しかしずぶずぶと相手にのめりこんでしまうところは“落ちる”が正解なのだろう。
こんな風に誰かを愛せるようになってしまった自分に自分自身驚いたし、それからこんな風に自分をぐずぐずと深く深く落としていく彼の存在が少し恨めしい限りだ。
ただ、それも悪くはないと想っている。
格好悪いと笑われたって構わないくらいにそんな現状が結構気に入ってる。
仕事が全く手につかない真夜中の事。
双子の兄は呆れたように「仕事を後回しにするから大事になるのだ」というけれど当面は勘弁してほしい。
今の俺に出来るのは「全力でミロを愛すること」だけなのだから。
満天の星空の下、足取りは軽い。
目指す宮はもうすぐそこだ。きっと今は暖かいベッドの中で眠っているであろう彼を揺り起こしてそしてなんて言ってやろうか。きっと返ってくるであろう不機嫌そうな表情と寝ぼけた声を想いながら口元には自然と笑みが乗るのだった。
眠れない。
昼寝をしすぎた、とかコーヒーの飲みすぎ…というわけではない。
体の奥底から何かがざわざわとあふれ出す感覚がしてどうやっても眠れないのだ。
ガキの頃から使っているベッドは大人になってもひとりじゃちょっと広いダブルサイズ。ちょっと前まではこのベッドで寝るときはどんと真ん中を陣取っていたのにいつの間にか右につめるのが癖になっていた。
「これではまるで誰かを待ちわびているようではないか」そう思って何回もその癖を直そうと試みたのだが一度ついた癖は頑固で今ではもう治すことを諦めてしまった。
どうにも最近、自分自身の感情を抑えることが不得手になってきたように思う。
もともとあまり得意ではなかったけれど、こと、最近は本当に酷いと自分でも自負している。
それを誰かのせいにするのは心苦しいが、けれどこればかりは言っても罰は当たらないと思うのだ。
「全てはカノンのせいだ」って。
「……」
そう思ったら、途端無性にカノンに会いたくなって俺はそっとベッドから飛び降りた。
このベッドももう買い替え時かもしれない。
一人では広いベッドは二人ではちょっと狭いから、あいつと二人で選びに行こう。
ベッドから飛び降りて無造作に脱ぎ捨ててたサンダルを履いてベッドルームを飛び出す。
今日の昼間仕事が進まずサガに「明日の朝までに提出しろ」と仕事を渡されていたからきっとあいつはまだ起きているはずだ。居住スペースから神殿内に入りひやりとした空気にふるりと身を震わせてから上着を持ってくればよかったとちょっとの後悔をしながらも俺はあいつがいる宮を目指し歩き出す。
引き返すちょっとの時間も惜しいのだ。
たった数秒の時間でも。
「ふふ…カミュあたりに言えば呆れられる、かな?」
幼い頃からの親友はきっとこんな自分を鼻で笑うのだろうけど、こればかりは仕方ないのだ。
だって恋をしてしまったのだから。情けないくらいに、溺れてしまうほどの恋を。
宮を出れば天に広がるのは満天の星空。
真夜中に出歩くには絶好の天候だ。
きっと今頃は自宮の書斎でうんうんと書類とにらめっこしているであろう彼を思い浮かべ、そして顔を見せたらなんと言うだろうかと想像するとつい、口元が緩んでしまう。
「手伝ってやるから俺に構え」とわがままの一つでも言ったらあいつはなんと返してくれるだろう…想像は尽きず、顔面の崩壊は止められない。
ただ、なんとなくだけれどあいつならそんな俺を邪険にせず我侭を言う俺の頭を撫でてくれるのだろうな、きっと。
足取りは軽く気分は上々。ころころと転がり落ちてゆくのもたまにはいいものだと思ったのは初めてのことだ。
ころころと、恋に。
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