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誕生日小説一旦お休みでカノミロ前提のカノンとデスマスクのお話。
ほんのりデスミロ風味



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頼りないその手を気まぐれに取ったのは自分だ。
頼るべき存在を失い途方もなくなったその子どもに見せかけの優しさで接したのも自分で、それからその手を唐突に切り離したのもやっぱり自分だった。

今にして思えば自分は何をしたかったのだろうと、甚だ謎だ。ただ、縋り付いて来たその小さな手の柔らかさも温度も、捨てたときのあの絶望に染まった大きな瞳の色も今でも色濃く覚えているのだ。




夜中から降り出した雨は未だ勢い衰えず、叩きつける様な雨音がひっきりなしに部屋の中へと飛び込んできていた。恵みの雨といえどこうもせっかくの休日に降ることはないだろう、とデスマスクはリビングの窓辺に置いた椅子に座り、外の景色を眺めながら本日数度目の溜息を吐き捨てるのだった。
とくに何か予定があったわけではないが天候の乱れで自宮に引きこもるなどせっかくの非番がいささか勿体無い気がする。
傘を差してどうやっても足元はぬかるみで汚れてしまうだろうから街に下りるのは億劫だし、それから友の治める宮に行くにもちょっとばかり距離がある。
さてさてこの暇な時間をどうやって潰そうかと頭をひねるデスマスクだったが、ふと、自宮に近づく小宇宙に気づき、おもむろに椅子を立ち上がった。
この気配は自分の感覚が正しいならば昨夜、まだ雨が降り始める前にここを通っていった男のものだ。獅子宮とは反対の隣の宮、双児宮の現在の主であるカノンの。
デスマスクとカノンは隣同士宮を構えてはいるものの交流はあまりない。
それはカノンが正式に双児宮の主、つまり双子座の黄金聖闘士に任命されて日が浅いという事もあったし、なんとなく、カノンには近寄りがたいものがデスマスクにはあったからだった。
だが背に腹は変えられぬ。
暇で暇で死にそうな思いをするくらいならばまだ多少苦手であってもカノンを捕まえて暇を潰すほうがよっぽど生産的だ。
「シャカじゃねえだけマシだしな」勝手なことを言いながら、デスマスクはリビングのドアを開けると肌寒い宮内へと入った。


「よお、色男サン。随分な様子だな」
「…デスマスク」
宮にカノンが入ってきたときからその発される小宇宙で不機嫌なことは分かってはいたもののいざ、そのカノンの様を見てデスマスクは小さく口元をゆがめるのだった。
「どっかの毒使いの猫にでもやられたか?」
「……」
無言を肯定の意味だとデスマスクは受け取る。
不機嫌で物憂げな表情はどこか兄であるサガに似ている。けれど全く違って見える。
そんなことを滔滔と考えることでデスマスクはなんとか込み上がる笑みを堪え、頬に赤い引っかき傷とそれから腫れ跡を残すカノンに「暇ならちょっと付き合えよ」とカノンに続けた。


「やべ…コーヒー切らしてた。紅茶でいいか?貰い物なんだけどよ」
カノンを居住スペースに招き、リビングのソファに据わらせた後、キッチンへと入りデスマスクはカノンに問うた。問いに「構わん」と短く返すカノンは所在なげに部屋を見渡して、それから居心地悪そうにソファの上で腰を数度動かした。
デスマスクとこうやって雁首突合せるのは初めてだった。
隣同士とはいえ、正式にカノンが黄金聖闘士になって日が浅い所為もあってなかなか交流する機会がもてなかったし、それにどこか彼とは距離をなんとなくだが感じていたのだ。
「アフロに貰ったマロウティーしかなかったわ。まあ、どうぞ」
「ありがとう」
言って置かれた紅茶と名乗りながら青い色の液体で満たされたティーカップ。
レモンを入れればそれはさあとピンク色に変わっていく。
紅茶に視線を落としながらカノンはここは年長である自分が咲きに口を開くべきか否か逡巡していた。部屋の中に充満するのは沈黙。そして降り続く雨の音。
昨夜、恋人の宮へ向かったときにはまだ降っては居なかったのだが、今朝、ミロと少し口げんかをしてしまい天蠍宮を出たときには殺人的な土砂降り模様だったのだ。
こんな土砂降りを見るとどうにも気分が参ってしまう。自分が犯した過ちを思い起こさせるからだ。
「ミロとさっさと仲直りしておけよ。あいつは根に持つぞ」
ぼそりと吐き出された言葉にティーカップから目の前の男に移せばデスマスクは窓の向こうを見つめていた。
灰色の空。降り続く細い糸のような雨。
気を抜いていればきっと、先ほどのデスマスクの言葉も聞き逃していた。
「デスマスク?」
「…あいつぁ、執念深いからなぁ」
くつくつと笑い、ティーカップを口元に運びながらデスマスクは続ける。カノンはその笑みに持ち上げかけたティーカップを再び受け皿に戻した。
「どうして」
「…ん?」
「どうして、お前はミロと別れたんだ?」
聖戦の後、生き返り、カノンはミロと付き合い始めた。
隠し立てするようなことでもなかったし、ミロは嘘が下手な人間だったからすぐに二人が恋人になったことは聖域中に行き渡って多くの人間が祝福の言葉をくれて。それは目の前の男も皮肉交じりだったが同じで…。
「知ってたのか?」
薄く歪めらるデスマスクの唇。問いに小さく頷けば「そうか」とデスマスクは呟いたきりソファの背にとっぷりと寄りかかった。
「自分の欲を満たしかったのだろうな…」
「欲?」
自嘲気味に呟かれた言葉に問いを返せばデスマスクはどこか、寂しそうな笑顔でもう一度「欲さ、ただの」そう返すのだった。

ひっそりと静かな部屋。
外からの雨音がそれ以上の追及をためらわせ、カノンはすっかり赤茶色に濁ってしまったマロウティーを口の中に流しいれるのだった。
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