つれづれとミロ受けなお話ポチポチ書いてます。
|
+ + + + + + + + + +
「肥料はここにおいておけばいいか?」
「ああ、すまない。助かった」
難儀している彼を見かけたのは丁度、暇つぶしに言っていた図書館から戻って来た昼少し過ぎのことだった。
重さ的には問題はないだろうが数的に一人で持つには少々無理がある程度の肥料の袋を抱え、えっちらと階段を上るその背にカノンは声を掛け手伝いを買って出た。
今まででの彼では考えられないことに自分自身内心驚きながら。
「いや、すまんな。助かった」
「構わん…俺も暇を持て余していたところだ」
今日は久々に取れた休日で、天気も良好。暑過ぎず寒くもない穏やかな気候にもかかわらずカノンは何もする気が起きずだらだらと過ごしていたのだ。
理由は単純明快。ミロがいないから。それにつきる。
「ああ、そういえば今日はミロは出ているのだったな」
困ったように笑うアルデバランにカノンも少し口元を歪める。
恋人だからといって二人同時に休暇を取れることはあまりない。
それでも聖域内の書類仕事であれば昼食の差し入れだなんだと理由をつけ会いにいけるからいいのだが聖域外ではそれもままならず、こうしてカノンは一人の休日を持て余していたのだった。
「それにしても見事な農園だな」
アルデバランが治める金牛宮の裏庭にかついできた肥料袋を置き、カノンはふぅと一息つきながらざっと小さな農園を見渡した。
大きさこそそう広くはないのだがそれなりにきちんと整理された農園は素人の趣味の域は超えている。
そもそもなんで聖域の、しかも宮殿の裏庭に畑なんてと思わないでもないがそういえばミロも自宮の裏庭で調理に使う細々としたハーブを育てていたなと思い出し口をつぐんだ。
もっといえば双魚宮の華麗なる主は見事な花園を造るために日々土にまみれているそうだし…
「まだここに来たばかりの頃、ミロやアイオリアにせがまれたことがあってな。あの二人は聖域外のことはあまり知らんだろう?俺のようによそ、しかも海外から来たものは珍しかったのだろう」
「それで農業を始めた、と?」
「まあ、そういうことだ。お前は郷里でどんな風に暮らしていたと聞かれたから実家は農家だったと応えた結果が…まあ、これだな」
なるほど、それで道理で玄人裸足の農園なのかとカノンは納得した。
まだ時期には早いトマトは小ぶりで実は青いが丁寧に育てられていることは枝振りを見れば分るし、雑草一つ生えていないところからはアルデバランのまめさが伺えた。
「今でも時折手伝いに来てくれるのだ、あの二人は」
「そうなのか…」
そういえば時折「アルデバランのところにいってくる」とふらりと出かけたかと思えば土まみれで帰ってくることがしばしあったな、とカノンはふいに思い出す。
あれは訓練でもしてきたのだと思っていたのだが農作業の汚れだったのか、と思わずカノンは苦笑を漏らしてしまった。
まさか黄金聖闘士が農作業で汚れて帰ってくるとはこのカノンも予想だにもしなかった。
ふと、カノンは耳に届く聞き覚えのあるリズムに土に落としていた視線を丁度肥料袋を積み上げているところだったアルデバランへと移した。
無意識に口ずさんでいるのであろうその歌はカノンがよく聞く歌だったのだ。
「その歌は…」
「ああ、俺の郷里の歌だ。農作業していると懐かしくなってつい、口ずさんでしまうんだ」
やや照れくさそうにいうアルデバランにカノンはそっと目を細めて言った。
「ミロもよく口ずさんでるよ」
てっきりミロの郷里であるミロス島の歌なのだと思っていたがどうやら違っていたらしい。
不意に知ったまた新たなミロの新事実がカノンにはなんだか嬉しく感じられた。
些細なことでも好きな人間について知ることができるのは喜ばしい。
なんともくだらないと人は笑うかもしれないがそのささやかな幸せが今のカノンには何よりも尊く感じられるのだ。
「なあ、アルデバラン」
まだ、ミロ以外の人間と交流を持つのは少々躊躇われるものがあるが…
「なんだ?」
少しずつでも、前向きに検討するのも悪くないだろう。
「俺も、農作業手伝いに来てもいいか?ミロと一緒に」
そうすればきっとミロも喜んでくれるだろうし、それに
「ああ、大歓迎だ」
小さな頃のミロの話をもっと聞けるだろうから。人好きする満面の笑みで首を縦に振るアルデバランにカノンも少しだけ笑みを零すのだった。
PR
この記事にコメントする
カレンダー
リンク
フリーエリア
最新コメント
プロフィール
HN:
まめ
性別:
非公開
ブログ内検索
最古記事
P R