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双子誕生日小説第三弾、カノミロ前提デスマスクとアルデバランのお話。
ミロは出ません。



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久しぶりにたらふく酒を飲んだ気がする。
カノンはやや重い頭を抱えながら目の前の冷たい水の入ったコップに口を付けるとそれを一気に煽った。
きんきんに冷えたミネラルウォーターはぼんやりとした意識を覚醒させ胃の腑に染みわたる。
最後の一滴までのどの奥に流し込み、それを机の上に置くとカノンは胸ポケットに無意識に手を伸ばし…小さく舌を鳴らした。

「…ああ、さっき切らしたっけ」

お目当てのものは小一時間前に全て消費してしまったことを思い出し、ソファにだらりと手足を投げ出せば目の前から差し出されたのは一本の煙草。
ちらりと視線を向ければそれはデスマスクが差し出してくれた煙草だった。
自分がいつも吸うものより少し軽めのものだ。

「すまんな」
「いーえ」

言って、デスマスクは口元をにっと持ち上げるとカノンが口に煙草を咥えたのを確認してその先にライターの火を近づけた。
薄暗い部屋に赤く灯が点る。
煙草の先に火がつくとカノンは深くそれを吸い、白い煙を吐き出した。
いつ吸い始めたか覚えてはいない。
ただ、最初は大人のマネをして格好つけていただけだった気がする…。
今では情けなくも手放せないようになってしまったが。
同じくカノンの向かい側に腰を下ろしたデスマスクも煙草を咥え吸い始める。
二人分の吐き出された紫煙は細くたなびき天井へと登り溶けるように消えていく。

真夜中の聖域は静かだ。
風の音と草木が揺れる微かな音だけが耳に届く。
それに今日は新月だった。
月のない夜は星の灯りだけが空にともり、電気を消した室内は星明りだけでは光源としてはすこし足りない。

「あんたも強いんだな」

笑みを含んだ声でそういわれ最初は何が?と問おうと口を開いたカノンだったがすぐにそれが床に転がるワインの数々の事であると気づき口を閉じた。

「俺もサガもザルどころか枠だからな。ひっかかる部分もない」
「だぁな。おっそろしい兄弟だぜ」

けけけと笑いながらデスマスクも水をあおる。
飲みすぎたことへの仕返しか、とも思ったが酒を飲もうと誘ってきたのも次々に進めてきたのもデスマスク本人である。
それはなかろう、とソファにとっぷりと沈むカノンにデスマスクは不意に質問を投げつけるのだった。

「あんた、いま幸せか?」

問われた言葉にカノンは弾かれたように顔を上げた。
薄暗い部屋ではデスマスクの表情は分かりにくい。
発する小宇宙も穏やかなものだからますますだ。
ただ、その穏やかな水面に僅かな波紋ができている事に気づかないカノンではなかった。
カノンはいつかミロが言っていたことを思い出し、口元をゆがめる。


『デスマスクはああ見えておせっかい焼きでな。そういうところがあるから憎めないのだろうな…』

自分ほどではないにせよデスマスクと言う男もそれなりに「悪」な男だとカノンは認識していた。
実際、教皇の正体がサガと知りながらそれに加担していたほどだから。
それでもミロが未だデスマスクを慕っているのはこんな一面があるからなのだろうとカノンはなるほどと納得する。
聖域に来てミロとサガ以外で最初に声を掛けてくれたのはこのデスマスクだったし・・・

本当にこの男は…

「結構、おせっかいなんだな。お前」

やや笑みを含んだ声で言えばデスマスクは「うるせえ」と少しだけ照れたように顔を背けるのだった。
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