つれづれとミロ受けなお話ポチポチ書いてます。
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掃除をしようと思って、とりあえず目に入った冷蔵庫の中から掃除をはじめようと思った。
年代を感じさせる古い冷蔵庫。
それはあいつがここに来たときからもう既にあったらしいそれはファンの音はするし、どこもかしこもくたびれてる。
買い替え時のそれをいつまでも変えずにおいてあるにはそれなりに愛着、というものがあったのだろう。
冷蔵庫を開けるともれ出る冷気。
わずかな明かりが薄暗いキッチンを照らす。
「あ…」
目に入ったのはオレンジジュースのビン。
2リットルはあるだろうか…未開封のそれにミロは目を細めた。
そのジュースをこの冷蔵庫においていった人物はもう、この宮に帰ることはない。
二度と…。
そう思うとなぜだか無性にそれが憎らしく思えて、
無性に、腹が立って。
「捨てるのか?」
「アイオリア」
振り返るとそこにはアイオリアが立っていて、俺は掴んだオレンジのビンを掲げる。
「誰も飲まないだろ。こんなクソ甘いの」
このジュースを買ってきた本人は超が付くほど辛党なのだがオレンジジュースだけは死ぬほど甘いものがお好みで。
だからこのジュースは死ぬほど甘いのを俺もアイオリアもよく知っている。
子供の頃からの長い付き合いだから。
そしてこの聖域にはこの死ぬほど甘いジュースを飲む人間はもういない。
「捨てるなら一口くれ。飲む」
差し伸べられるアイオリアの手。
「死ぬほど甘いぞ?」
「知ってる」
きゅっぽんと小気味のいい音を立て、ビンから直接ジュースを煽るアイオリア。
しかし、すぐに咽て大きく咳をする。
「甘いな…」
「だか…、ああ…アイオリア、俺にも一口くれ」
「クソ甘いぞ」
「知ってる」
アイオリアからビンを受け取って一口含んで、俺もむせ返る。
「甘いな」
「ああ、甘い」
甘いオレンジがやけに胸の奥にわだかまって、それからムカつかせて、
痛いくらいに胸を締め付ける。
「甘い」
「ああ」
もう一度繰り返す俺の言葉に静かにアイオリアは返す。
甘いオレンジジュースは依然甘いままで、
古い冷蔵庫は依然古臭い音を立てたままで、
ただ、甘ったるい感傷だとか、そんなもんな似合わないくせに、
一人前に俺らはそれぞれに何かを痛めていて、
その傷に甘ったるいオレンジジュースはやけに染みたんだ。
「なあ、アイオリア。みんな呼ばないか?」
「ああ?」
「慰労会でも、やろう」
突然の俺の提案に眉間にしわを寄せて見下ろしてくるアイオリア。
思わず苦笑する俺。
おいおい、そんな変なもの見るような目で見るなよ。
俺はオレンジジュースのビンにふたをはめて、テーブルにおいた。
「これでさ、ちょっとした慰労会といかないか、アイオリア」
「……そうだな」
小さく笑うアイオリアに、俺は目を細めて、それから人数分のコップをテーブルに並べた。
ひどく甘ったるい感傷を、
ひどく甘ったるいオレンジジュースで埋めようじゃないか。
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