つれづれとミロ受けなお話ポチポチ書いてます。
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小さい時、ハロウィンというものは「お菓子をもらう日」だと単純に思っていた。
「トリックオアトリート」は子供とっておきの魔法の呪文で、初めてソレを知った日にはハロウィンの日でもないのにサガやアフロディーテに何度も何度もお菓子をせがむためにその魔法の言葉を使っていたことをミロは思いだすたびに恥ずかしい思いをするのだった。
「ミロ、そろそろハロウィンだけれど今年はどうするんだい?」
また、子供のときのようにお菓子をせがんでくれるのかな?
くすくすと笑いながら問うてくる綺麗な笑顔の男を目の前に、ミロは渋面を作ると「アフロディーテは意地悪だ」と飲みかけの紅茶に口をつけた。
アフロディーテは時折、面白楽しそうにミロが小さいときのことを思い出してはミロの前で楽しそうに笑う。
別にミロを辱めるのが彼の目的ではないのだろうが、しかしネタにされる本人はたまったものではない。
今日もまた始まった、と何を言っても無駄なアフロディーテの前でミロは話が終わるのをただただ耐えるしかないのだ。
「仕方ないだろう? ミロは小さいときから愛らしく、初めて会ったときは天使が舞い降りてきたのかと思ったほどなのだから。ああ、今も充分可愛らしいと思っているけれどね」
「っ、だから、そんな恥ずかしいことを言うなと」
この聖域で一番と名高い美貌の持ち主にそんなことを言われてもなんだか冷やかしにしかミロには聞こえない。
それでも恥ずかしさは拭えなくて、顔に熱が集まるのを感じながら俯くミロの頬にそっと伸ばされたのは少しひんやりとしたアフロディーテの手だった。
以外にも彼の指は節だっている。
それは常に園芸に勤しんでいるからであり、そんな無骨で男らしい彼の手がミロは好きだ。
「俺もハロウィンを楽しむような歳ではない…もうお菓子など俺も今さらせがむものか」
俯きながらそう吐き捨てればそっと撫でられるフェイスライン。
思わず背筋にぞくりと走るなにかと、きゅんと胸が疼くのを感じながらミロはアフロディーテをちらりと上目遣いに伺った。
「ならば今年は…私が君に言ってみようかな」
「え?」
「お菓子をくれなきゃいたずらするぞ、ってね。そうだな…例えば君がお風呂に入っているときなんかに」
「そ、そんなところにお菓子など持って入らないぞ?」
「だからいいんじゃないか」
にっこりと笑みを濃くし、アフロディーテはテーブルに乗り上げるようにミロへと腕を伸ばして続けるのだった。
「私の目的はお菓子じゃなくて、君へのいたずらだからね」
【ハロウィンと薔薇の人】
「お風呂だと直接的に悪戯できて手間要らずでいいじゃないか、なあ?」
「俺に、聞くなっての…!」
「あと…そっちのチョコレートと…ああ、そっちのキャンディもくれ」
ミロに付き合って出かけたのはアテネ市街地のお菓子屋だった。
久々に戻ってきた聖域の自宮で休んでいたカミュは昼前に突然やってきたミロに誘われて市街へとやってきた。
「一緒に市街へ出かけないか? ちょっと買いたいものがあるのだ」と言うミロに二つ返事で誘いを了承したものの、その買い物量にカミュも流石に閉口せざるを得なくなってきたのだった。
「どれだけ買うのだ…?」
ミロが幼い頃から甘いものを好んで食べていることはカミュだって知っている。
しかしこれは少々…いや、かなり買いすぎだろう?と大きな紙袋を抱えるミロに呆れたように言えばミロは「わかっていないな」と大業に肩を竦める仕草をしてみせた。
「来週はハロウィン…だろう? 今年は子供は貴鬼だけではないからな。星矢達の分も用意しておこうと思ってな」
氷河だってお菓子は好きだろう?と笑いながら言うミロに、しかしそれでも買いすぎだろう?とカミュは口にしかけたその言葉をあえて飲み込んだ。
まだ聖戦が始まる前、氷河やアイザックと三人でシベリアで暮らしていたときもミロはこの季節ふらっとお菓子を抱えてやって来てくれたことをカミュは思い出す。
そして口元が自然と持ち上がるのだった。
ミロが来るのを二人はとても楽しみにしていた。
お菓子が目的…というのもあったろうが自分の師と違うタイプの大人が来てくれるのが純粋に楽しかったのだろう。
そして、カミュだってミロが来てくれるのが楽しみだった。
寒いのが苦手でいつもシベリアに来るたびに「ここは寒すぎる!」と必ず一度は文句を言う彼が、それでもここに来てくれるのが。
聖域で初めて出来た親友で、そして愛する彼が来てくれるのが。
「ミロ」
「うん?」
立ち止まりミロの名を呼べば少し先を歩いていた彼は立ち止まり振り向いた。
きらきらと陽に透ける金の髪は太陽のように明るくて綺麗だ。
シベリアの灰色の空ばかりを見つめる生活がこのところ続いていたからミロの持つ色彩はカミュの心を晴れやかにさせてくれる。
「私もお菓子が欲しい」
「お前も?めずらしいな。辛党のお前が」
市街から離れ、聖域へと続く道を二人歩きながら、ふと洩らされたカミュの言葉。
その言葉にきょとんと首を傾げてみせるミロに、カミュは穏やかな笑みを浮かべるとミロの傍に歩み寄り柔らかな彼の唇を指先でつんとつついた。
「私の大好物の菓子が一つだけあるのだ…どこにも売っていないとっておきがな」
「ふむ…それはもしや毒をもったお菓子ではないか?」
「ああ。だが私には甘美な毒でな」
楽しげなミロの言葉にカミュは愛好を崩したまま一歩近づくとミロの髪へと手を伸ばした。
柔らかな髪が手に心地よく、淡い柑橘系のシャンプーの香りがふわりと漂ってくる。
「ならば、俺もカミュには特別なお菓子がもらいたいな」
「それは、シベリア特産の菓子かな?」
楽しげに問うカミュにミロは「ああ」と頷くと明るい笑顔をその顔一杯にうかべるのだった。
【ハロウィンとシベリア産の菓子】
「ああ、だが…私はどちらかというとその菓子にいたずらするほうが楽しいかな」
「た、食べ物で遊ぶのは駄目なんだからな!」
料理は凝ったものでなければ大抵のものは作れる。
自分の郷里のものだとか、ギリシャに来て口にした簡単な食べ物だとかは。
デスマスクほどではないが自分の料理の腕はそれなりに確かなものだと思っていた。
それこそ腹をすかせた後輩黄金聖闘士の腹を満足させる程度…には。
「シュラ~まだ~?」
「もう少し待て。全くお前は…突然人の宮に来て「アップルパイが食べたい」なんてどこの子供だ」
キッチンのオーブンの前に立ち、焼加減を窓越しに確認していれば背後から抱きつかれてシュラは口から出る溜息をそのままに、背後にくっついたままのミロへ呆れたような声をかけるのだった。
ミロがこんな風に食べ物を強請りに来るのは彼が小さなときは珍しいことではなかったが、大きくなってからは一度もなかったことで。
懐かしいそれにシュラもなんだか今日ばかりは少し張り切ってしまった。
「だってもうすぐハロウィン、だろ? だからさ」
「だから俺に菓子を強請りに来た…と?少し早すぎやしないか?」
まだハロウィンまでには少々時間がある。
いくらせっかちなミロだって気が早すぎる話だろうに。
体ごと振り向き、ミロを見つめようとするシュラに、ミロは「待って」とそれを制すると更にシュラにしがみ付くようにシュラの体に腕を回すのだった。
「ミロ?」
「…だって、ハロウィン本番だとシュラに甘えられないだろ…みんなシュラのとこ、来るし」
ぽつり、と洩らされたミロの言葉。
そしてするりと外される彼の腕をシュラは取ると、今度こそ体を反転させてミロの体を自分の腕の中に閉じ込めた。
「え!」と慌てたようなミロの声が耳に届くがお構い無しだ。
ぎゅうと力いっぱい抱きしめるとそのままシュラはミロの耳元へそっと顔を寄せるのだった。
「余り可愛いことをしてくれるな…悪戯するぞ」
「っ…」
耳元に吹き込んだ言葉。
それにふるりと体をミロを震わせる。
「しても、いいよ」
「!」
「悪戯…しても、いいよ」
気恥ずかしそうな声でミロが答えるのと、それから背後でオーブンがチンと音を立てるのはほぼ同時のことだった。
真っ暗なオーブンの中をちらりと一瞥し、シュラはいい感じに焼けたであろう渾身の出来のアップルパイを尻目に、ミロの体をひょいと肩に抱きかかえた。
ミロの間の抜けた声も今はシュラを「煽る」要素でしかない。
「男に二言はないな?」
「っ、ったりまえだ」
「では、存分に悪戯させていただく」
ずんずん、とキッチンを出て寝室へ向かうシュラの肩に担がれながら、ミロは口元に小さな笑みを浮かべるのだった。
【ハロウィンとアップルパイ】
「さて、どう調理したものか…」
「素材の持ち味を生かした調理法がおすすめ…です」
「なるほど」
「ミロ!はい、お菓子」
「お菓子…?なに、いきなり」
「うん? ハロウィンのお菓子だよ」
久々に一緒に過ごす夜のこと。
身を寄せ合ってソファの上でくつろいでいれば差し出されたのは子供の頃よく食べていたチョコレート菓子。
なんだこれ?とその菓子を恋人のアイオロスの顔を見比べれば彼は破顔したままでもう一度「ハロウィンだから」と言うのだった。
「アイオロス…俺、もう子供じゃないぞ」
「ああ、知っているさ。けれど折角のハロウィンだろう? 久しぶりにお前にお菓子をあげたくなってな」
久々というか、俺的にはそんな感覚はしないのだが…とぽりぽりと頬をかくアイオロスにミロははっとさせられ、そして顔を俯かせた。
サガの手によりアイオロスが命を落としたのは13年前のことだ。
その彼が死んだときからちゃんと歳を経た見た目で生き返ったのは自分たちと同じく半年ほど前のことだがそれは外見だけの話で中身はまだあの頃のままなのだろう。
だからアイオロスにとって弟のアイオリアはじめミロ達もまだまだ小さな子供の時の感覚…というのがたぶんに残っていて、恋人という立場になってからも時折される子供にするような対応はミロも困惑するところだったりするのだ。
判ってはいるのだ。
アイオロスにはこの13年の間の感覚がない、ということも。
それはどう足掻いてもしかたのないことなのだと。
ただ、それを意識するたびにどうしようもない気持ちにミロは襲われるのだ。
そうして、もしも平和なままアイオロスが生き残ってくれていたら…と考えずにはいられずになって…。
「ミロ…?」
「あ、ごめん…」
「また…俺はお前を困らせてしまったようだな」
「そ、そんなことは、ない!俺が、いけないのだ」
困った風に眉を下げるアイオロスにミロは慌てて首を振る。
アイオロスにそんな顔をミロはさせるつもりではなかった。なのに自分のせいで時折彼を困らせてしまう。
それはミロには悔しくてならなかった。
子供の頃、一杯迷惑をかけ一杯世話になった彼に大きくなってからも苦労をかけるだなんて。
恋人、という立場になってまで彼を困らせるだなんて…そんなの、最低だ。
「ミロ、お前は悪くはないよ。俺の為にいろいろ考えてくれているのだろう?その思い…俺は嬉しいよ」
「アイオロス…」
「ミロのそこまで思ってもらえるなんて…俺は幸せ者だな」
にこにこと笑いながら言うアイオロスにミロは耳が熱くなるのを感じながら、アイオロスに差し出された菓子を受け取ると愛しげにそれを撫でるのだった。
「アイオロス…ハロウィンってお菓子を配る日…じゃあないぞ?」
「え?そうだっけ」
「ふふ…勘違いしていたのか?」
笑みを零し、ミロはそっとアイオロスに体を寄せるとチョコレート菓子をテーブルの上に載せ彼の頬にちゅっと触れるように口付けた。
「お菓子をくれない人に…悪戯する日なのだ」
「なるほど。それで、お菓子をやった俺にはご褒美をくれたのかな?」
「そういうこと」
ミロの口付けに気を良くしたのか、アイオロスも釣られて笑みを浮かべるとミロの頬に触れるような口付けを返す。
「ならば、俺も強請ろうかな」
「アイオロスはどっちかというともらえないほうを期待してそうだけど?」
「はは…ばれたか」
ミロの体をソファに押し倒し、アイオロスは笑みを濃くするとミロの頬を両の手で包み込んで言うのだった。
「お菓子は入らないから、悪戯させて」と。
【ハロウィンと悪戯】
「心は子供…とか、絶対嘘だ」
「いやいや、子供だからこそ遠慮がないのさ」
やれ「この菓子を食え」だの「これを持って帰れ」だの顔を見るたびに何かを押し付けてくる隣宮のその人が今日はやけに静かだった。
どうしたのだろうと思いながら天秤宮を通る際、ミロはその主に呼び止められ突然手を差し出されるのだった。
「ミロ!ん!」
「はい…?なん、でしょうか」
「はろうぃーんじゃ!ミロ。とりっくおあとりーと!」
「…ああ」
言われて初めてミロは今日がハロウィンだということに気づき、そして意外すぎる人からのその言葉にミロは思わず目をまるくしてしまうのだった。
「ああ、ではないぞ、ミロよ!お菓子をくれなきゃいたずらするぞ?」
それでもわしは良いのだがの、と続け「そうしたらお前さんの恋人に怒られてしまうかな?」とにやりと口元に笑みを浮かべる老師…こと童虎にミロは思わず苦笑してしまう。
「老師からそんな台詞を聞くとは…以外だったもので」
「わしもたまには若いもののようなことがしてみたくての!さっきはデスマスクから菓子をもらったぞ」
「デスマスクから…」
一体どんな顔であいつは老師に菓子を渡したのだろうと、想像するに笑えてきて慌ててそれを脳内から追いやるとポケットの中をがさごそと漁るのだった。
そういえば、先ほど白羊宮でムウに貰ったものがあったはずだ。
「こんなものしかありませんが…よろしければ」
「うん…? ああ…チョコパイというやつだな」
つい先達て、アテナを日本に送り届けた際に勝ったのだ、とムウがくれたのがその日本の製菓会社が作っているというそのチョコパイだった。
真っ白なマシュマロの挟まったそれは以前日本の城戸邸に滞在していたときに星矢にも貰ったことがあったもので、なかなかにミロもその味が気に入っていた。
ムウにもたしかそれを話した気がするから覚えてくれていたのだろう。
それを童虎に手渡せば彼は一瞬、笑顔で顔を輝かせたがすぐにそれを曇らせるのだった。
「こういっておいてなんだが…コレはミロの大事なものではないか?」
「気になさらないでください。来週また日本に行く用事もありますし、俺はその時にたくさん買えますから」
「来月…そういえば来月はお前さんの誕生日じゃったな。日本には旅行かの?」
「え…ええ」
「その顔はカノンと一緒、って感じかの?」
「え!?あっ、それは…」
「図星じゃのう」
「うう…」
にやにやと笑みを濃くする童虎を目の前に誤魔化すことは叶わず、おずおずと頷けば彼はミロの目の前で「そうか!」と満面の笑みを浮かべるのだった。
「仲が良いのう…いや、恋人じゃから良いのは当然じゃな」
「も、老師!からかわないでください!」
「ほほ、すまんすまん。ついお前さんたちが可愛らしくてな」
可愛がってしまうのよ、と続ける童虎にミロも今度ばかりは肩を怒らせ「俺、もう行きますからね!」と歩き出す。
その背に童虎は笑みを零しながら声を張り上げるとミロの名を呼んだ。
「ミロ!」
「なんですか?」
振り返るミロに、怒りながらもそんな素直なところがカノンを惹きつけるのだろうな…と思いながら童虎は愛好を崩したまま続ける。
「菓子をありがとう。それから、幸せにな!」
童虎の言葉に、しばしミロは目を瞬かせていたがすぐに笑みを返すと大きく頷くのだった。
【ハロウィンとお節介焼きの隣人】
「シオンよ…カノンとミロの子供はやはり女の子がよいかのう?」
「童虎…突っ込み待ちなのか?」
「トリックオアトリート」
突然言われた一言に、ミロは手にしていた包丁の動きを止めて声の主の方へ首だけを振り向かせた。
先ほどまでリビングのソファに座り新聞を読みふけっていたその男はいつのまに気配を消して背後にやってきていたのか、のしりとミロの背中に寄りかかり、肩の上に顎を乗せてくる。
普段、決して人前で見せることのないそんな甘えた風な態度がミロは嫌いではない。
「ラダ?」
「お菓子をくれないといたずらする」
「甘いの苦手なくせに」
くすくすと笑い、ミロは包丁を今度こそまな板の上に置くと体ごと振り返りラダマンティスの頭をわしわしと、犬にするようにかき撫ぜる。
そうすればラダマンティスは一瞬、不満げな表情をしたがすぐにその表情を消すとされるがままにミロに撫でられ続けるのだった。
「チョコレートと、キャンディーと…あとは昼に買ってきたクルーリの残りもあるけど。お前が欲しいのはそんなんじゃないんだろう?」
ラダマンティスの頭を撫でる手を止め、その手をフェイスラインをなぞるように下ろし、頬をその手で包み込めばラダマンティスは素直に一つ頷いた。
「お前が欲しい。甘い甘い…りんごが」
「ふぅん…ちゃんと残さず食べてくれるのか?」
ちゅ、と少しだけ背を伸ばしてラダマンティスの頬に口付ければそのまま閉じ込められる彼の腕の中。
その中は暖かくて、酷く優しくて口元がつい、緩んでしまう。
「もちろんだ」
「ふふ…じゃあ、お腹一杯召し上がれ」
今宵はハロウィン。
夕食は甘い甘いりんごが一つ。
【ハロウィンとりんご】
「服と言う皮を剥けば甘い甘い身が待っている…と」
「恥ずかしい奴だ!」
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