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つれづれとミロ受けなお話ポチポチ書いてます。
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探偵パロ、カノミロ(病院チーム)のお話。やっぱり書きたくなって少しずつカノンの過去に触れていきます。
今回はアスプロスとミロしか出てこないけど^^;



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「やあ、ミロ」


病院の近所に住む独居老人に薬を届けに行った帰り道。
ふと、背後から掛けられた聞き覚えのある声にミロは僅か表情を強張らせ振り向いた。
にこやかに微笑みを浮かべ、こちらへと近づいてくる声の主はミロが良く知る男で、苦手とする男でもあった。

『ア』

片手に老人から土産としてもらったみかんの入った袋を提げていたため苦労したが、肩掛けかばんからメモ帳を取り出し言葉を綴ろうとしたミロは、しかし一文字目を書いたところで手を止められた。
顔を上げればすぐ傍に男が立っている。

「筆談じゃなくて、私は君と声で会話がしたいな」

微笑を浮かべながらも、どこか底知れぬ雰囲気を発する男にミロはふるふると首を横に降った。
最近は自身の能力を抑えることになんとか美味くいっているミロが、それでも頑なにこの男に対し筆談を用いるのはカノンがこの男をあまり好いていないから…だった。
カノンが実家に帰りたがらない要因であるこの男…叔父アスプロス。
どうしてカノンがアスプロスを苦手としているか…詳しくはミロもカノンに聞けずじまいだったが、とかくカノンの敵は自分の敵、であるミロがアスプロスを警戒しないはずはなかったのだ。

「私も嫌われたものだね。まあ、仕方ないか。ミロはカノンの事が一番だろうからね」

どこか嘲笑を含んだ物言いにミロは気づかない振りで首を縦に振った。
そしてメモ帳を開いてさらさらとペンを走らせる。

『用件はそれだけでしょうか?それならばこれで失礼します』

簡潔なその一文に浮ぶはっきりとした拒絶の意思。
それを感じ取り、アスプロスは口元に小さな笑みを浮かべる。
それはミロがもう一度頭を下げ踵を返すまで続き、一歩彼が踏み出そうとした瞬間に・・・冷淡なものへと変わるのだった。

「カノンの夜泣きはまだ続いているのかい?」

その声は小さな呟きだった。
然りとミロの耳には届いた。

「なん…」
「ああ、その反応を見るとまだあいつは夜泣きをするらしいね。仕方のない大人だ」

くすくす、と嗤うアスプロスにミロは頭に血が上るのを感じた。
自分の事ならばなんと言われようと耐えられた。
けれど、カノンのことを言われるのは嗤われるのは我慢できない。

「あなたに…あなたにカノンの何が分かるというんです!」

張り上げた声は普段、感情を人前でそう帰ることのないミロにしては珍しいほど怒りに震えていた。
我を忘れるように激昂するミロに、しかしアスプロスは表情を変えぬままに…冷淡に返すのだった。

「ならば問おうか。君はカノンについて…あの男について何を知っている?」
「え…?」

その問いにミロは目を丸めた。
不意に、胸の奥底を抉られた様な感覚をミロは覚えたのだ。

「カノンが夜にうなされるわけを。カノンが無免許医になったわけを。カノンが実家に寄り付かないわけを、君は知っているのか?いや…知らないはずだ。カノンは誰にも自分の弱みを見せない。理由を告げない。それがなぜかわかるか?あの男は誰も信用していないし誰も心の中に入れないからだよ。」

アスプロスの言葉はまるで剣の切っ先のようにミロの心を切り刻んだ。
カノンを信用しなかった日はミロには一度たりともない。
拾われたあの日から、カノンを信じカノンの為にミロは生きてきた。
好きだよ愛しているよと言われて、それだけでカノンの全てを知った気になっていた。
カノンに頼られ、求められ、自分が彼の全てになったのだと、そう信じて病まなかった。
たったそれだけのことなのに、どうして天狗になることができたのか…冷水を頭から被せられたような衝撃に目が眩む。
ああ…まるで道化だ。
自分が立っている場所が「喜劇」の舞台の真ん中と知らずに主役を演じている気になっていた「道化」だ。

「ミロ…ミロ…ああ、そんな顔をしないでくれ。私は君を悲しませたいわけではないんだよ」

そっと、頬に当てられたアスプロスの手はミロには冷たく感じられた。
冷え切っているのは自分のほうだというのに、その手の冷たさは心まで凍りつかせるように感じられた。

「私はね、ミロ。君の事が好きなんだよ。愛おしいと思っている。幸せになってもらいたいと思っている。けれど君はカノンと一緒に居れば幸せにはなれないんだ。……あの男は。カノンだけは幸せになってはならないのだからね」

その時、初めてミロはアスプロスの表情に感情が浮かぶのをはっきりと見た。
心底憎み、うらむような表情。
どれほど相手を嫌悪すればそんな表情を作ることが出来るのか、ミロはその思いの強さに思わずぞっとした。

「ど…して」
「うん?」
「どうして…カノンをそんなに嫌うんですか?」

頭の中が真っ白で、ぐちゃぐちゃで何も考えられなかった。
けれど聞かずに入られなかった。
理由なんて、本当は知りたくもないのに。

「…教えて欲しいかい?」

頬を撫でていたアスプロスの手が滑り、親指がミロの唇をなぞった。
おずおずと見上げるアスプロスの表情は人を食ったようないつもの笑みに戻っている。

「デートをしようか」

にこやかにアスプロスは言葉を紡ぐとそっとミロの顔に自身の顔を寄せた。
息が唇に吹きかかるほどに、近く。
底知れぬ闇のような暗さがアスプロスの瞳の奥底で燻っている。

「美味しいパンケーキの店を知ってるんだ。一緒に…行ってくれるだろう?」

アスプロスの言葉にミロはただ、頷くことしかできなかった。
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